現在を知る 福島県立安積高等学校3年生 『高校生が伝えるふくしま食べる通信』初代編集長 菅野智香さん 菅野智香さん

『私の大好きな福島が誤解されて悔しい』~高校生の挑戦

「高校生らしく、福島の美味しさ、その農作物を作る人の想いを届けたい」
故郷の福島への強い想いから、福島の高校生が農家を取材して書いた記事と
福島の食材と共に定期購読者に年4回送る『高校生が伝えるふくしま食べる通信
(通称:こうふく通信)』を立ち上げた管野智香さんに想いを語っていただきました。取材日:2016年2月24日

福島の重要な産業である農業を元気したい

菅野智香さん インタビュー画像1 ― 『こうふく通信』について教えてください 立ち上げたキッカケは、あすびと福島の半谷さんが主催する「高校生のためのオープンスクール(※)」に参加したことです。最初、友だちに誘われ参加しました。参加前から高い志があったわけでなく、スクールに通い続ける中で自分のやりたいことは「福島の震災復興に関わりたい」と見つけました。 ※高校生のためのオープンスクール『半谷・エダヒロ塾』
福島の若手人材の育成に取り組む一般社団法人あすびと福島が、2014年4月から月に1回開催している、福島の高校生を対象とした社会起業塾。自分の志の実現や社会問題を解決するアクションを起こすための様々な力を養うために、毎月多くの高校生が、講師であるあすびと福島の代表理事の半谷栄寿さん、環境ジャーナリストの枝廣淳子さんからそのマインドや手法を学んでいる。菅野さんは、日常の学校生活では「震災復興をやりたい」なんて話すと周囲から「意識高い系」と思われてしまうのでなかなか口に出せなかったが、オープンスクールに通う友だちとなら素直に自分の想いを話し合えた。
東日本大震災は中学一年生の時に体験しました。それまでは「将来、都会のキラキラしたところで働くのだろうな」と漠然と思っていました。だけど東日本大震災があったことで、それは一変しました。中学生の時に使っていた通学路や施設がボロボロになっていき、自分の生まれ育った福島が多くの人に非難されて、風評被害で大きなダメージを受け、立ち直れない状態になってしまうんじゃないかと思うのが悔しくて…。そうした気持ちから自分ができることを考えて、まずは福島の重要な産業のひとつである農業を元気にさせたいと思いました。

菅野智香さん インタビュー画像2 そのために、夏休みを利用して近所のスーパーでアンケート調査をしました。その結果、『生産者の顔写真を紹介した売り場の売上が伸びていること』を発見しました。そこで農家さんが作ったものをそのまま売るだけではなく、美味しく食べられるレシピや福島の農家さんがどんな想いで育てたのかを紹介していくのが良いんじゃないかな、と思いつきました。 「○○さんが作ったものなら安心」「○○さんが美味しいと食べてくれるのが嬉しい」そんな生産者と食べる人とのつながりの関係を創っていきたい」という自分の想いをスクールで発表すると、多くの人が賛同してくれました。その後、「一緒にやりたい」と言ってくれた4名の後輩と計5名で『こうふく通信』の創刊号を目指すことになりました。

達成感と力不足を同時に感じた創刊号

菅野智香さん インタビュー画像3 ― 『こうふく通信』創刊号の頃の様子を教えてください 『こうふく通信』は事務局のあすびと福島など、大人たちに手伝ってもらいながら制作を進めています。みんなで相談した結果、創刊号は郡山市の鈴木農園さんの『ジャンボなめこ』を取り上げることになりました。
初めての取材。取材前にインターネットで念入りに調べ、質問内容をまとめ、取材後はみんなで手分けしてそれぞれのパートごとに原稿執筆を行い、とても良いものができたと考え、事務局に原稿チェックをお願いしました。
しかし、原稿チェックの結果は「文章も写真もお金を払って買うレベルのものには程遠い」と言われ、とてもショックでした。高校生の感性で感じた情報を伝えることが大切なのにインターネットで調べられる綺麗なだけの文章になってしまっていたり、みんなで手分けしたことで“つぎはぎの文章”になってしまっていたのです。

菅野智香さん インタビュー画像4 スケジュールを考えると時間がなかったので多くの大人たちに助けられながら、創刊号は完成しました。完成した達成感と力不足を同時に感じたのが今でも記憶に残っています。そうした反省を活かし『こうふく通信』第2号は、取材後にみんなで全体のストーリーを話し合い、編集長の私が一人で特集ページを執筆するなど各種改善を行いました。
オープンスクールでも毎号の振返りをしてPDCAを回しながら、メンバー一人一人が成長しています。
このような取り組みを続けるうちに、私たちの志に賛同していただいた企業の皆さんの前でPRさせていただく機会をいただいたり、テレビや新聞や雑誌などで取り上げていただくことも増え、今では多くの読者の方々から応援してもらえるようになりました。

大学生活で多くのことを学び将来の福島へ還元

菅野智香さん インタビュー画像5 ― 今後やりたいことを教えてください 今年の春から東京の大学に通い、多くのことを学び・吸収して将来の福島に還元していきたいです。また、これから『こうふく通信』を創っていく高校生たちを今度は事務局側からサポートしていきたいです。
あと、半谷さんが、東京の大学の進学した私たちをはじめとした元・高校生に対して「大学生のためのオープンスクール」を実施する話があるので、オープンスクールで同級生だったメンバーと一緒に参加して『こうふく通信』以外のものにも挑戦していきたいです。

現地にて自分の五感で感じることの大切さ

菅野智香さん インタビュー画像6 ― みなさんへメッセージをお願いいたします 福島沿岸部の現場では、復興に向けてこれからも多くの人が必要とされます。福島を知りたいけどどうしたらいいかわからないという方は、まずはインターネット検索で調べてみて欲しいです。検索してみるとセミナー、見学ツアー、スタディツアーなど数多くの福島を知るイベントが実施されているので、興味持ったイベントに参加してみて、足を運んでみたいと思う人が少しでも増えてくれればと思います。実際に福島に行くと「復興はまだまだ時間がかかるんだな」とか、いろいろな事を感じると思います。それがキッカケでIターンする人が出てくるかもしれないし、そこで事業を始める人が出てくるかもしれないですしね。 また、食べ物に関して『福島県産=不安』というイメージを払拭したいです。私たちは『こうふく通信』の取材を通して、生産者の方がどんなに食べる人のことを想って作物を育て、安全性を確かめて出荷しているかを見てきました。市場に流通している福島県産のものは、検査を経て基準を満たしているもので、先入観だけで福島県産が判断されるのは、作り手のご苦労を知っているだけに、残念なことだと感じています。正しい情報を得て判断していただくという、冷静な視点を持っていただくことが大切だと思います。 福島の中にも「他の地域の人は、福島県産は食べない」と諦めている人がいますが、一方で福島のものを楽しみに待っている人もいるので、もっとお互いが情報交換し、それぞれの価値観を認めながら、誤解を解いていける場を創っていきたいです。

取材・撮影
櫻庭伸也

プロフィール

菅野智香

福島県立安積高等学校3年生。『高校生が伝えるふくしま食べる通信』初代編集長。2016年4月から人と社会のつながりを学ぶため東京の大学へ入学。将来、学んだことを福島に還元していきたい。